個人情報流出のニュースが続く今、知っておきたいパスワードの意外な話
最近、企業から個人情報が流出したというニュースをよく見かけませんか?
2026年10月9日には、ブックオフグループが会員情報の漏えいについて発表しました。最大約643万件の会員データが流出した可能性があり、氏名や住所、メールアドレスなどに加えて、パスワードの「ハッシュ値」も含まれていたそうです。
こういうニュースを見ると、やっぱり気になりますよね。
「自分のパスワードは大丈夫だろうか?」
パスワードの使い回しはやめましょう。不審なメールには注意しましょう。
こうした話は、皆さんも一度は聞いたことがあると思います。
そこで今回は、いつもの注意喚起とは少し違う、意外と知られていないパスワードの豆知識を紹介したいと思います。

豆知識① パスワードは毎月変更しなくてもいい?
皆さんは、パスワードを定期的に変更していますか?
以前は「パスワードは定期的に変更しましょう」と言われることがよくありました。
そのため、毎月変更したり、末尾の数字だけ変えたりしている方もいるかもしれません。
ところが、現在の米国国立標準技術研究所(NIST)のガイドラインでは、問題が起きていないパスワードを、理由もなく定期的に変更することは求めていません。
なぜだと思いますか?
例えば、パスワードを毎月変更しなければならないとします。
最初はしっかり考えて設定していても、何度も変更しているうちに、
「前回は123だったから、今回は124にしよう」
というように、少し変えるだけになってしまうことがありますよね。
これでは、変更しているつもりでも、安全性が十分に高まらない可能性があります。
大切なのは、何度も変更すること自体ではありません。
推測されにくいパスワードを使い回さず、漏えいや不正利用の疑いがあれば速やかに変更すること。
これが重要なんです。
もちろん、サービスから変更を求められた場合や、パスワードが漏れた可能性がある場合は別です。
豆知識② 情報が流出しても、パスワードがそのまま読めるとは限らない
先ほどのニュースに出てきた「ハッシュ値」。
聞き慣れない言葉ですよね。
これは簡単にいうと、パスワードをそのまま保存するのではなく、一定の計算処理によって別の値に変換して保存する仕組みに関係するものです。
例えば、あなたがパスワードを入力して会員登録したとします。
サービス側がパスワードを適切に管理していれば、データベースにパスワードそのものをそのまま保存するのではなく、ハッシュ値として保存する方法があります。
そのため、仮にデータが流出しても、パスワードそのものが直接読めるとは限りません。
ただし、ここで安心しすぎてはいけません。
ハッシュ値が流出したからといって、絶対にパスワードを解読されないわけではないからです。
パスワードが短かったり、よく使われる単純な文字列だったりすると、攻撃者が候補を大量に試して、元のパスワードを突き止めようとする可能性があります。
つまり、サービス側がパスワードを適切に管理することも大切ですが、私たち自身が推測されにくいパスワードを設定することも大切なんです。
そして、もし同じパスワードをほかのサービスでも使っていたらどうなるでしょうか?
一つのサービスで流出した情報が、別のサービスへの不正ログインに使われる可能性があります。
これが、パスワードの使い回しが危険だといわれる理由の一つです。
豆知識③ パスワード管理アプリは、偽サイトに気づく手がかりにもなる
ここは、ぜひ知っておいてほしいポイントです。
皆さんは、パスワード管理アプリを使っていますか?
「パスワードを全部アプリに預けるなんて、かえって危ないんじゃないの?」
そう感じる方もいるかもしれません。
もちろん、管理アプリにも安全に使うための注意点はあります。
ただ、信頼できるパスワード管理ツールを使うメリットは、パスワードを覚えなくてよくなることだけではありません。
偽サイトに気づく手がかりになることもあるんです。
例えば、いつも利用しているショッピングサイトのログイン画面が表示されたとします。
見た目は本物そっくり。でも、実は偽物のサイトだったとしたら?
パスワード管理ツールの多くは、登録したサイトの情報と照合して、対応するログイン情報を自動入力します。
そのため、いつも自動入力されるはずなのに入力されない場合、サイトのアドレスが違っていないか確認するきっかけになります。
ただし、自動入力されない理由はほかにもあるので、それだけで偽サイトと断定はできません。また、パスワード管理ツールを使っていても、偽サイトへの手入力を防げるとは限りません。
それでも、毎回自分でパスワードを入力するより、危険に気づく機会を増やせる可能性があります。
パスワード管理ツールを使うなら、管理ツール自体のマスターパスワードを強く設定し、利用できる場合は多要素認証も有効にしておきましょう。
さらに一歩進んで、「パスキー」という方法もある
最近は、パスワードを入力せずにログインする「パスキー」という仕組みも広がっています。
例えば、スマホの指紋認証や顔認証を使ってログインする方法です。
サービス側がパスキーに対応していれば、従来のパスワードを入力する代わりに、端末の認証機能などを使って本人確認ができます。
パスキーは、偽のログインサイトにパスワードを入力させるタイプのフィッシング攻撃に強い仕組みです。
もちろん、すべてのサービスが対応しているわけではありませんし、スマホやパソコンのロック解除など、端末そのものの管理も大切です。
それでも、パスワードを覚えたり入力したりする負担を減らしながら、安全性を高められる方法として注目されています。
まずは、今日できることから
ここまで読んで、「自分のパスワード管理、大丈夫かな?」と心配になった方もいるかもしれません。
そんな方は、まず次の3つを確認してみてください。
- 重要なサービスで、同じパスワードを使い回していないか
- メールやSMSに書かれたリンクから、安易にログインしていないか
- 多要素認証やパスキーが使えるサービスでは、設定できているか
特に、メールアドレスを使っているサービス、ネットショッピング、SNS、金融サービスなどは、一度確認しておくとよいと思います。
そして、パスワードをたくさん覚えられないからといって、簡単なものに統一する必要はありません。信頼できるパスワード管理ツールを利用する方法もあります。
パソコンやスマホを使っていると、便利なサービスがどんどん増えていきます。
その一方で、自分の情報を守るための方法も少しずつ変わってきています。
私もパソコンやスマホを販売・修理する仕事をしていますが、機械の性能だけでなく、安心して使い続けるための知識も大切だと感じます。
難しい専門知識を全部覚える必要はありません。
まずは、パスワードの使い回しを見直すこと。できるサービスでは多要素認証やパスキーを使うこと。
そんな小さなことから始めてみてはいかがでしょうか。
パスワードは、インターネット上の自分の家の鍵のようなもの。
鍵を一つの場所で使い回さず、きちんと管理する。そんな意識を持つだけでも、セキュリティ対策の第一歩になると思います。



